【人工血管】大動脈瘤・大動脈解離で障害年金はもらえる?

大動脈疾患の皆様、障害年金という制度をご存じですか?

「障害年金」は、原則20歳~64歳の方が対象で、病気や事故のため障害を負った方に対して、国が支給する年金制度です。65歳以前に初診日があり、日常生活や仕事に支障がある方に対して支給されます。

こちらの記事では受給のポイント・過去の受給例をご紹介します。

大動脈瘤や大動脈解離を発症したとき、多くの場合は人工血管やステントグラフトの挿入手術を受けることになります。大動脈疾患で手術を受けた人は、障害年金を申請することが可能です。

大動脈疾患で障害年金を受給するポイント

  • 初診日の要件
    人工血管又はステントグラフトを挿入した方は、障害等級3級に該当します。ただし、初診日に厚生年金保険に加入していることが必要です。初診日に国民年金に加入して いた方は、原則、受給できません。
  • 保険料納付要件
    原則、初診日の属する月の前々月までの過去1年間に保険料の未納がないことです。初診日の属する月の前々月までの過去1年間に、厚生年金保険に加入していれば、保険料納付要件は満たすと思われます。
  • 障害認定日要件(障害の程度の要件)
    人工血管又はステントグラフトを挿入した日が、初診日より1年6月を経過しなくても、「障害認定日の特例」が適用され、障害認定日請求ができます。人工血管又はステントグラフトを挿入した日がすでに初診日より1年6月を経過している場合は、事後重症請求となります。

大動脈疾患の障害の程度は、3級のみです。

障害の程度障害の状態
3級1.胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分のイ又はウに該当するもの
2.胸部大動脈解離や胸部大動脈りゅうに、難治性の高血圧を合併したもの

(注1)
Stanford分類A型:上行大動脈に解離がある。
Stanford分類B型:上行大動脈まで解離が及んでいないもの。

(注2)
大動脈瘤とは、大動脈の一部がのう状又は紡錘状に拡張した状態で、先天性大動脈疾 患や動脈硬化(アテローム硬化)、膠原病などが原因となる。これのみでは認定の対象 とはならないが、原疾患の活動性や手術による合併症が見られる場合には、総合的に判断する。

(注3)
胸部大動脈瘤には、胸腹部大動脈瘤も含まれる。

(注4)
難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が140 mmHg以上又は 拡張期血圧が90mmHg以上のもの。

(注5)
大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はあるが、完全治癒を望める疾患ではない。従って、一般的には1・2級には該当しないが、本傷病に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、さらに上位等級に認定する。

・大動脈瘤の定義:嚢状のものは大きさを問わず、紡錘状のものは、正常時(2.5~3cm) の1.5倍以上のものをいう。(2倍以上は手術が必要。)
・人工血管にはステントグラフトも含まれる。

請求方法

人工血管又はステントグラフトを挿入した日が、初診日より1年6月を経過しなくても、「障害認定日の特例」が適用され、障害認定日請求ができます。人工血管又はステントグラフトを挿入した日がすでに初診日より1年6月を経過している場合は、事後重症請求となります。


大動脈疾患での受給事例

事後重症請求で、障害厚生年金3級が決定
傷病名:大動脈弁狭窄症、上行大動脈瘤(人工弁置換術、上行大動脈人工血管置換術)
年齢:60代 性別:男性
決定した年金の種類と等級:障害厚生年金3級
請求方法:事後重症請求
支給額:年額約60万円

相談時の状況

ホームページを見て夫婦でご相談に来られました。15年以上前の健康診断で心雑音を指摘され、検査の結果、発症が認められ、以後経過観察を受けていました。約4年前から、息切れなどの自覚があり、検査で手術が必要と判断され、人工弁置換、人工血管置換手術となりました。経過は順調でしたが、無理ができず、短時間の軽作業の仕事しか行えなくなりました。いろいろ調べて、最近障害年金のことを知ったということで相談に来られました。

相談から請求までのサポート

初診日と診断書作成の医療機関が同じ場合、受診状況等証明書は不要です。そこで、手術を受け、現在も経過を診てもらっている病院に診断書の依頼をしました。
診断書には、初診から現在までの経緯を詳細に記載してもらいました。診断書の記載には細かいルールがあります。出来上がった診断書を一つ一つ精査し、不具合のあったところは訂正してもらいました。
人工弁置等手術日が、初診日から1年6月経過後であったため、事後重症請求を行いました。
ご相談者は、初診日が共済組合に加入中でしたので、共済組合に確認をしながら進めました。
老齢厚生年金の受給開始が近かったので、障害者特例のご説明をし、老齢年金請求時に必要なことをアドバイスさせていただきました。

結果

申請から約2ヵ月後に、障害厚生年金3級の通知が届きました。

相談を悩んでいる方・ご家族の方へ

障害年金は、同じ傷病でも個々人、初診に至る経緯、初診から現在に至るまで、また、症状も異なってきます。当事務所では相談者様としっかりと話し合い、ベストな請求方法を提案しています。障害年金の手続きは非常に複雑です。まずはお気軽にご相談下さい。