高次脳機能障害で障害年金はもらえる?

高次脳機能障害の皆様、障害年金という制度をご存じですか?

「障害年金」は、原則20歳~64歳の方が対象で、病気や事故のため障害を負った方に対して、国が支給する年金制度です。65歳以前に初診日があり、日常生活や仕事に支障がある方に対して支給されます。

こちらの記事では受給のポイント・過去の受給例をご紹介します。

高次脳機能障害は障害年金の対象疾患です。

高次脳機能障害とは、病気や交通事故などにより脳の一部に損傷を受けた結果、「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」等が見られ、それにより日常生活や社会生活(就労等)に支障が生じた状態をいいます。
高次脳機能障害は、身体の障害を伴わない場合もあるため、外見からは分かりづらく「見えない障害」とも言われます。ご本人も周囲も症状に気づきづらいため、周囲から理解されにくく、ご本人・ご家族は辛い思いを抱えやすいです。

高次脳機能障害で障害年金を受給するポイント

初診日の要件
 初診日に国民年金または厚生年金保険に加入していることが必要です。
保険料納付要件
 原則、初診日の属する月の前々月までの過去1年間に保険料の未納がないことです。初診日の属する月の前々月までの過去1年間に、厚生年金保険に加入していれば、保険料納付要件は満たすと思われます。
障害認定日要件(障害の程度の要件)
 障害認定基準抜粋
(5) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会  生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。 なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。 また、失語の障害については、本章「第6節 音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定する。
(2) 各等級等に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
 

障害の程度障害の状態
1級高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状がなため、常時の援助が必要なもの
2級認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級1.認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
2.認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金認知障害のため、労働が制限を受けるもの

請求方法

初診日から1年6か月(障害認定日)時点で、障害状態に該当している場合、認定日請求を行います。障害認定日に障害状態に該当しない場合であっても、その後症状が悪化し、障害状態に該当している場合は、事後重症請求を行います。

診断書

診断書は、「精神の障害用」(様式120号の4)を使用します。
症状に応じ、「肢体の障害用」(様式120号の3)「言語機能の障害用の診断書」(様式120号の2)を使用します。

高次脳機能障害で支給決定となった事例です。

事後重症請求で、障害厚生年金2級に決定。
傷病名:高次脳機能障害
年齢:40代 性別:男性
決定した年金の種類と等級:障害厚生年金3級
請求方法:事後重症請求
支給額:年額約98万円

相談時の状況

交通事故に合い、くも膜下出血~硬膜下血腫の疑いで入院加療。退院後も記憶力の低下、感情の起伏が激しく、翌年高次脳機能障害の検査をしたところ、診断が出たとのことでした。
ご相談時、ご本人は短時間ですが就労しており、厚生年金に加入されていました。仕事場は病状に配慮があり、体調が悪い時は休みやすい環境でしたが、数時間前に話した事も忘れる、言葉に詰まるなどで、サポートがないと難しい状況でした。日常生活は、夜間何度も起きる、鬱のような症状がでる、物忘れが激しく、火の元も不確かなため、家中に張り紙をしていて、家族に定期的に見に来てもらっておられました。

相談から請求までのサポート

初診日ははっきりしており、主治医も障害年金の申請に好意的ということでしたので、ヒアリングの後、年金記録の確認をし、診断書を依頼しました。
障害の原因が交通事故の場合「第三者行為事故状況届」の提出が必要になりますので、事故の状況(発生した事故の状況、相手方や保険会社等)を詳細にお聴きしました。

第三者行為災害とは、自分以外の誰かによって、その障害となった原因が発生したケース(相手方のいる交通事故や、暴力事件の被害者になった場合等)をいいます。この場合でも障害年金は給付されるのですが、相手方から受け取る損害賠償により、支給される障害年金が調整されます。(調整される年金は最大で2年分です。)

結果

申請から約2か月後、支給決定通知が届きました。

相談を悩んでいる方・ご家族の方へ

障害年金は、同じ傷病でも個々人、初診に至る経緯、初診から現在に至るまで、また、症状も異なってきます。当事務所では相談者様としっかりと話し合い、ベストな請求方法を提案しています。障害年金の手続きは非常に複雑です。まずはお気軽にご相談下さい。